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青年の主張

「農家の朝は早い」なんて、下条アトムのナレーションのような言葉であるが、我が家の一番の早起きは烏骨鶏たちである。

日に日に日の出が遅くなり、山間のこの集落では8時くらいにならないと日が射さないというのに、3時半ころには鬨の声を告げる。

コゥケッコーと鳴くのは、お父さんと呼ばれる白い雄。烏骨鶏チーム結成当初からのメンバーで、押しも押されもせぬボスである。

グーゲーと鳴くのは、ライオン丸。お父さんから3か月ほど遅れて我が家に来た若雄。茶色で立派な襟巻状の羽毛が特徴である。

しかし、二羽とも鳴き方が下手である。自分を棚に上げ、有り体に言うと音痴である。それでも年長のお父さんがましなので、ニワトリも年を追うごとにうまく鳴くようなるのだろうなと漠然と思っていた。

しかし近頃、この二羽の声に交じって少し甲高い声で「コケコッコー」とお手本のような鳴き声が聞こえてくるではないか。驚いて観察していると、どうやら4月末に生まれた若鶏のオスが鳴いている様子。そうすると、この高い声はいわゆるボーイソプラノか?ウィーン少年合唱団のような声が響き始めると、なんとなくライオン丸が鳴りを潜めるような気がしている。確かにこの声を聴いてしまうと、恥ずかしくなっちゃうかもなぁ、、、、。ライオン丸にも頑張ってほしいが、ウィーン少年合唱団の歌声も聞き続けたい、そんなアンビバレントな状況である。